2018年2月24日土曜日

【言語】 日本語の自動詞・他動詞 形におけるルールの研究

【経緯】
外国人の友人が、自動詞と他動詞についてそれぞれの型は覚えているんだけど使う際にどっちがどっちだったかよく忘れてしまうので、法則を探ってみた。(自動詞・他動詞の概念は理解している前提)

一般にはよく、「~を」をつけられる方が他動詞という説明があるが、それを判断するにはどちらが自然かわかっている必要があり、ネイティブ以外にはピンとこないことも多い。そこで、かたち上のルールを探してみるも、少なくともネット上には見つけられなかった上に、「ない」との回答まで。なので、見た目および音声的に分かる規則を独自に研究してみることにした。

その結果わかったこと。(仮説)

【仮説1】

まず、自動詞と他動詞、両方を持っている動詞は、例外を除いて、
  1. 「語幹+aる」、「語幹+oる」は、自動詞
  2. 語幹の後ろにサ行を含むもの(「~す」「~せる」「~する」・サ行型と名付ける)は、他動詞
  3. 「語幹+eる」、「語幹+u」は、中間の性質を持つ

と考えればOK。


※ ここでの語幹とは、自動詞と他動詞で変化しない部分のこととする。

表にしてみると、


より左側にあるほうが自動詞、より右側にある方が他動詞となる。

※ 便宜上、サ行型の「~」は語幹プラスアルファも意味できるものとする。
例:出る(d-eru)/出す(d-asu)の場合、「d-a」までを表す。


例を挙げて確認してみよう。

自動詞/他動詞
集まる/集める:~aる/~eる
変わる/変える:~aる/~eる
出る/出す:~eる/サ行
溶ける/溶かす:~eる/サ行
増える/増やす:~eる/サ行

伸びる/伸ばす:~iる/サ行
落ちる/落とす:~iる/サ行
尽きる/尽くす:~iる/サ行
※ 表を簡易にするため、「~iる」は表には書いていないが、サ行型すなわち他動詞と考えれば良い。

隠れる/隠す:~reる(~eる と同類/サ行
括弧 … 便宜上同類とみなす意。以下同じ。

乗る/乗せる:~ru(~u)/サ行
消える/消す:~ieる(~eる)/サ行
揺れる/揺する OR 揺らす:~eる/サ行
移る/移す:~ru(~u)/サ行
こもる/こめる:~oる/~eる
動く/動かす:~u/サ行
掴まる/掴む :~aる/~u

刺さる/刺す:~aる/~u
合わさる/合わせる:~aる/~eる
※このような語幹にサ行を含む動詞は注意する。(サ行型ではない。)

滅ぶ/滅ぼす:~u/サ行
潤う/潤す:~u/サ行
なくなる/なくす:~naる(~aる)/サ行
積もる/積む:~oる/~u


ただ、実は困ったことがある。

進む/進める:~u/~eる
立つ/立てる:~u/~eる
叶う/叶える:~u/~eる
傾く/傾ける:~u/~eる
付く/付ける:~u/~eる


折れる/折る:~eる/~u
とれる/とる:~eる/~u
割れる/割る:~eる/~u
砕ける/砕く:~eる/~u
焼ける/焼く:~eる/~u
そげる/そぐ:~eる/~u

「~eる」と「~u」は表の同じ位置にあるから、このような動詞は、どちらが自動詞でどちらが他動詞か区別がつかない・・・。

だけど、よく見てみると手がかりが。

れる/折る:~eる/~u
れる/とる:~eる/~u
れる/割る:~eる/~u
れる/破る:~eる/~u
れる/切る:~eる/~u
生まれる/生む:~areる(~eる)/~u

「~eる」が「~れる」になる動詞は、「~u」が他動詞になっている。
例外もあるかもしれないけど。

逆に、「~eる」が「~れる」以外になる動詞は 、大体「~u」が自動詞。

沈む/沈める:~u/~eる
育つ/育てる:~u/~eる
揃う/揃える:~u/~eる
浮かぶ/浮かべる:~u/~eる
捕まる/捕まえる:~ru(~u)/~eる

でもでも、まだ問題がある。

「~く(ぐ)」と
「~ける(げる)」の動詞はどうやって区別する?

傾(かたむ)く/傾ける:~u/~eる
付く/付ける:~u/~eる
退く/退ける:~u/~eる
届く/届ける:~u/~eる
傾(かた)ぐ/傾げる:~u/~eる

砕ける/砕く:~eる/~u
焼ける/焼く:~eる/~u
そげる/そぐ:~eる/~u
抜ける/抜く:~eる/~u
剥(は)げる/剥ぐ:~eる/~u

これは結論から言うと、ひとつひとつ覚えるしかないと思う。
その証拠に

向く/向ける
剥(む)ける/剥く

むく、むける、むける、むく……。
活用も発音もアクセントも、まったく同じ。なのに自動詞・他動詞は逆転してしまうのだ。
仕方がないので、このパターンは地道に覚えてもらおう。
(ただ、すごく感覚的な話で言えば、「~ける(げる)/~く(ぐ)」のタイプは、結構大幅に物の状態が変わってしまうものが多い気がする。ある程度の目安にはなるかも(?))


最後に代表的な例外を載せて終わりとする。

分かれる/分ける:~areる/~eる
聞こえる/聞く:~oeる/~u
見える/見る:~eる/~ru
開(ひら)く/開(ひら)く


↓以下追記。更新版(仮説2)あり↓



【友人から指摘があったので、それに対する回答】

1.例にある「捕まる/捕まえる:~ru(~u)/~eる」って「語幹+aる」じゃない?
→ ごめん、「語幹」の定義について説明がなかったから混乱させた。(追記済み)
ここで言う語幹とは、自動詞と他動詞で変化しない部分のこと。
つまり、「集まる/集める」なら、「atsumaru/atsumeru」。語幹は「atsum」で、「語幹+aru/語幹+eru」となる。
「つかまる/つかまえる」の場合、「tsukamaru/tsukamaeru」。「tsukama」まで同じなので、「語幹+ru/語幹+eru」となる。

2.開くの自動詞は開けるじゃない?
→ 「開(ひら)ける」もたしかにある。「開(ひら)く」も自動詞として使える。特殊。

3.「~れる」は必ず自動詞だったら、最初の表の左側に「~れる」を入れた方がよくない?
→ 「~れる」が必ず自動詞という意味ではなくて、「~eる/~u」の組み合わせの時、「~eる」が「~れる」になる動詞は「~u」が他動詞ということ。
でも言われてみたら、もしかすると「~れる」はいつでも、ほぼ自動詞なのかもしれない。例外として、「入(はい)る/入(い)れる」がある。これを例外とすれば、「~れる」は自動詞として良いかも。

4.乗る/乗せるの「乗る」は「語幹+oる」のパターンだね?
→ これも1.と同じで、「noru/noseruで「no」まで同じだから、「語幹+ru/語幹+seru」。

5.「〜する」は大体自他動詞だね
→ ここでのルールは、冒頭に書いたとおり、自動詞と他動詞それぞれある動詞について、どちらかわからなくなった時のためのものだから、両方同じなら気にしない。
片方が「~する」で、もう片方が違う場合は、「~する」が他動詞と考えて良い。
自他動詞って用語はよく知らないんだけど、たぶん「熟語+する」(勉強する 運転する 等)の場合じゃないかな?


以上をふまえて更新すると、下の表のような仮説がたてられるかも。

【仮説2】


※ 「語幹+seる」(乗せる 等)は、サ行(~せる)としているが、別の解釈として「~eる」の同類とみなし「その他の ~eる」としても支障はない。

※ 例外の「分かれる/分ける:~areる/~eる」について、
「~areる」を「~eる」の同類とみなすと、「~れる」/「~ける」となり、うまく表に適合し、例外ではなくなる。

最後の最後に
改めて言うけれど、これはあくまで自動詞と他動詞が別の型として存在する動詞において有効と思われる相対的な位置であって、たとえば、自動詞のない「忘れる」は問答無用に他動詞である。


以上

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